論文紹介


 『少子化対策』としての『発症期緊急対応組織』の育成

笠松 正憲


愛知政治大学院 個人論文個人(2006.7作成)

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 『経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006』(骨太の方針06)で『少子化対策』は4大アジェンダの1つとして示されている緊急の課題である。日本の2005年合計特殊出生率は1.25であり、現人口を維持するのに必要といわれる2.08に対し大きく足りないのである。
 
 出生率の低下に対する政府の政策は、子ども子育て応援プラン(2004)として「女性の仕事と育児の両立」「男性の働き方の見直し」などの男女共同参画的な方策が採られている。少子化の原因が「女性の高学歴化や社会進出が晩婚化・未婚化につながり、少子化になる」という見方から「女性が出産した後も仕事と育児を両立できるような環境が整っていないため」という認識になったのである。私は雇用する立場であるが、既婚女性の雇用を躊躇する理由として最大のものは”子供が病気になった際の突然の休み”なのである。「女性の仕事と育児の両立」のポイントは子供が病気になった際の社会的扶助にあると思う。

 対応政策として『病児保育』『病後児保育』がある。『病児保育』とは、クリニックなど医療機関に併設された施設で、急に熱が出たなどの病気の急性期に、専門の看護師・保育士が看護休暇をとることのできない保護者に代わって病気の子どもの保育・看護をするものである。厚生労働省は「乳児健康支援一時預かり事業」として自治体とともに『病児保育』を助成している。『病後児保育』は、病気はほとんど治ったけれど、まだ、保育園にはいけそうもない、そのような病気の回復期に限定した施設である。現在、名古屋市内でのこれらの施設数は、病児保育所3、病後児保育所3のみである。例えば、病後児保育所の『すくすく北』の内容は、開設時間:月〜土8時〜18時。定員:4人である。質量ともに不足している。さらなる、政策対応を期待したい。
 私は『発症期緊急対応組織』の育成を提言したい。首都圏ではすでに、NPO法人『フローレンス』が存在する。この組織は、家庭からの患児発症の連絡を受け、子供の引き取り、病院の受診を支援する。その後、地域のベテランママである保育スタッフ「在宅レスキュー隊」に引継ぎ、一日中ケアに当たる。このような組織があれば仕事に遅刻することもなく「仕事と育児の両立」が図れるのではないか。このような『発症期緊急対応組織』は名古屋に存在しないのである。さらに良いことに「在宅レスキュー隊」の部門では、”育児のプロ”であるシルバー世代の能力活用が期待できる。


    (引用)

NPO法人フローレンス    http://www.florence.or.jp/per/index.html
すくすく北(病後児保育所) http://www.hoiku.city.nagoya.jp/ninka/sukusukukita.htm


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