論文紹介


 『新たな少子化対策の推進』と「女性医師バンク」の活用

笠松 正憲


愛知政治大学院 個人論文個人(2006.8作成)

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  『新たな少子化対策の推進』で産科及び小児科医療システムの充実が項目として挙げられている。医師の偏在による特定の地域や産科、小児科の医師不足は深刻な課題となっており、早急に解決する必要がある。子供を生みやすい、育てやすい環境として、産科、小児科の充実は必須である。ともに女性医師(以下女医と略す)が大きな割合を占めている科目である。女医の医師全体に占める割合は15.6%だが、産科で20.6%(40歳未満で42.2%)、小児科で30.7%(同40.6%)である。厚生労働省「小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究」報告書は「小児科医は最近10年間、むしろ僅かながら増加しているが、実際の活動性は明らかに低下している。その最大の原因の一つは、女性医師の結婚、出産、育児のための離職」と分析している。私も医療従事者であり切実に感じることであるが、仕事と子育ての両立が困難で離職する女医は多い。女医が仕事と家庭を両立できる環境の整備は医師不足対策の重要なポイントといえよう。

 私は医師不足解消策として休職女医の有効活用を提言したい。すなわち「女性医師バンク事業」の育成及び活用である。復職したい希望を持つ女医が、パートタイム勤務など就労希望条件を登録して、条件にあう医療機関を選定しやすくする事業、それが「女性医師バンク」である。さらに、あわせて厚労省は、再就職を希望する女医に第一線の技能・知識を習得してもらうための講習会の開催を計画している。

 昨今、医師不足を理由に、時限的な医学部定員増加や地方大学医学部の「地域枠」(へき地出身者を対象とした推薦入試)創設などの医師増員策が計画されているが、『経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006』(骨太の方針06)に示されているとおり、現在の政府は医療費削減を目指しているのである。医師数を増加させる政策は一貫性を欠くのではないか。

 「女性医師バンク」の設立に加え、院内保育所の整備や柔軟な勤務形態の導入、育児休業を安心してとれる体制の整備など雇用側にも総合的な対策が求められる。「女性の仕事と育児の両立」「男性の働き方の見直し」など男女共同参画をめざす「子ども子育て応援プラン」は一般家庭を対象に策定されているが、医療従事者の家庭も例外ではない。女医への対応は、医療システム充実対策であるとともに、子供の生み手対策の意味を併せ持ち、重要だと私は考える。


    (参考文献)

「小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究」厚生労働省 
  http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/06/h0628-2.html
「厚生労働省における政策評価に関する基本計画」女性医師バンク(仮称)
  http://www.mhlw.go.jp/wp/seisaku/jigyou/05jigyou/05.html


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