論文紹介


「教育改革」の問題点

笠松 正憲


愛知政治大学院 個人論文個人(2007.1作成)

コメント: 


 安倍首相は今国会を「教育再生国会」と命名してほしいと注文するほど決然とした意志を燃やしている。力を失っていく公教育の力を取りもどすため「教育再生」というスローガンを掲げ、この問題を最重要課題として取り組んでいるのである。

 日本の現状を鑑み、私は「教育改革」の問題点を4点指摘したい。

@教育コスト 平成18年版「教育指標の国際比較」によると、日本のGDPに対する学校教育費比率(公財政支出)は、30カ国中29位(3.5%)である(参考値:アメリカ5.3%,OECD各国平均5.1%)。30人学級など、手厚く人を配置すればすぐさま教育現場が良くなるとは思わないが、国家の根幹をなす教育にかかるコストだけに、日本が諸外国に比べ著しく低い水準であることは認識すべきだと思う。

A教育行政のシステム 現在の教育行政は(学校設置者:市町村/人事権:都道府県/学習指導要領:国)とバラバラである。また、地方自治体では、予算編成権は首長、教育行政は教育委員会という二元性である。これを一元化し責任の明確化をはかる必要性を感じる。私見ではあるが、地域住民の民意を教育行政にも反映させるという観点から、直接選挙によって選ばれる首長を最終的な教育行政の責任者として位置づけるのが自然だと考える。教育改革が迅速に実行できない理由のひとつが、この教育行政の複雑なシステムにあるように思えてならない。

B危機管理チーム 外部専門家で構成された危機管理チームに学校監督権限を与え、各学校が教育の質について自らが責任を負うシステムが提案されている。しかしながら、管理することで教育は再生できないと私は考える。教育論議の多くは、先生や生徒をいかに監視し、管理するかという発想から出ているように思う。生徒が先生の顔色をうかがい、先生が教育委員会や政府の顔色をうかがうようになれば、教育は再生するどころか死滅してしまうのではないか。

C学校選択制 政策の目玉である。しかし、この施策を真に実のあるものにするには、まず国民の中に新しい価値観を醸成することが先に必要ではないか。職業、教養、趣味などすべてにおいて多様な生き方があり、各人それぞれに合った道を選ぶことが幸福につながるのだ、という共通認識を築かねばならない。その上で各学校がそれぞれの特色を打ち出し、自分の才能や個性を最も伸ばせる学校を子ども自身や保護者に選んでもらえるようにするべきである。


   <参考文献>

「教育指標の国際比較」(平成18年版) 文部科学省
  http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/03/06032718/001.htm


COPYRIGHT(C)2007 愛知医療政策研究会 ALL RIGHTS RESERVED.

無料ログ解析ネット証券比較